艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
駒宮室長の背中は、駅の人ごみに紛れてしばらくすると見えなくなった。
私の初めての恋は、見事に砕け散った。
きっと、次に会った時だってかっこいいって思うんだろうな。
まどかさんがうらやましいって思うんだろうな。
だけど、もう諦めなきゃ。
さっき駒宮室長と別れた位置から全く動けずに佇んでいる私を、仕事帰りのサラリーマンが好奇の目で見て通り過ぎていく。
ショックなのに涙なんか出てはこない。
私は重たい足を引き摺るようにして駅のホームまで歩く。
駅のホームにはもうすっかり冬の冷たい風がわずかに吹いていて、真っ暗な空は厚い雲で覆われて月さえ見えないでいる。
どんよりとした天気はまるで私の心みたいだ。
私は大きくため息を吐いた。
白い息がどんよりとした冬の空に静かに消えていった。
私の初恋と同じように―――。
【番外編:FIN】