艶恋オフィス クールな室長に求愛されてます
帰り支度を済ませた駒宮室長は、開発室の扉の前まで来るとおもむろに振り返り、私に視線を送る。

「お疲れ様…」

「佐々田。」

挨拶しなきゃ。

そう思って、出た言葉を遮るように駒宮室長が私の名前を呼ぶ。

「ハイ」

急に振り向いて名前を呼ばれたせいで、私は思わず背筋が伸びる。


「明後日の日曜、暇か?」

一瞬、視線を宙に彷徨わせた駒宮室長はいつもの不愛想な表情で、ぶっきらぼうの口調のまま、確かにそう言った。

「えっと……」

あまりの唐突な質問に、私が答えを探して考える。

「会社前、10時集合。じゃ、お疲れ」

バタン。


駒宮室長は帰ってしまった。

私は誰もいなくなった扉を見つめたまま、しばらく呆然としてしまう。

えっ?今のは一体何だったんだ。
しかも私、返事してないし……。

会社前、10時って何?

もう、全く意味が分からないんですけど。



『報告:駒宮室長の指示は、一方的です』 

後で、郁ちゃんにそうメールしようっと思っていたけれど、私企画のことで頭がいっぱいでそのメールを郁ちゃんに送ることを忘れてしまった。
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