五月雨・弐
「一緒に帰ろ~。」
圭吾がいないのを見て友香が駆け寄る。
私はポリポリと頬を掻いた。
「ごめん、先約。」
「え?」
「ね、そうだよね。」
私の後ろに立ったのはミズキだった。
少し怖くて遠くに立つ。
先約ってなに?
だって、家は正反対だし。
「あ、そうなんだ、じゃあね。」
「行くよ。」
「あ、うん。」
ミズキと距離を置きながら歩く。
何かされるんだろうか。
怖いというより、不安。
「…………じゃあ、行きなよ。」
「へ?」
「圭吾が待ってるんでしょ?」
何で知ってるんだろう?
眼をパチクリさせる私。
アホっぽい。
「アンタの話はいつも聞いてる。」
「そう、なんだ……。」
「避けられてるみたいだったから、近付きの印ね。友香ってキレるとやばいって言うし。」
思ったより優しい笑顔。
私は、勘違いをしていたのだろうか。
「……別にアンタの事嫌いなわけじゃないから。だから、避けたりとか、しないで。」
「……うん。」
「じゃあね。」
「あ、ありがとう。」
ニコッと笑って手を振ってくれたミズキ。
その笑顔が、今も離れていない。