五月雨・弐
「まだ……成績表は………。」
「解答用紙はあるだろう。出しなさい。」
恐ろしいお父さんの形相にビクつく。
眉間にいつもしわを寄せているお父さん。
私の天敵。
一番怖いものだった。
「…………はい。」
「早くしろ、時間がないんだ。」
震えた手で鞄を開ける。
圭吾がいたら守ってくれるかな?
ううん、そんなこと望まない。
だって今が幸せだから
この短いときを耐えてみせる。
「お願いします……。」
睨んだ紙が破けそうなぐらい
お父さんは怖い目をしていた。
言われる言葉は分かっていた。
「転校しなさい。」