五月雨・弐
「はっ、はっ、はっ…………!」
廊下を走る。
何度もぶつかって
何度も睨まれて
そんなのも気にせずに
私は走って走って
屋上への階段を登っていた。
“タッタッタッ!”
階段。
最上階。
屋上。
考える事は多くない。
そのうちの一つを私は考えていた。
嫌だけど
圭吾と離れたくないけど
私はもう、逃げられなかったから。
最期だけでも
皆に愛されたかったから。
“ガチャン!!”
屋上には、強い風が吹いていた。