五月雨・弐
「はぁ、はぁ、はぁ………。」
息切れがする。
苦しい。
苦しい。
喉もとを絞められているような感覚。
家の時と同じ圧迫感。
消えてしまったほうが楽だと思う衝動。
私はおかしくなっていた。
「…………!」
“ガシャンガシャンガシャン!!”
いつもなら登れないフェンスも低く感じた。
易々と登れて、少し悲しかった。
“ガチャッ!”
最後の金具に足を掛けて
私は校庭に一番近い所に立った。
風が吹いていて
それは止まらなくて
私の心臓は、破裂しそうだった。
怖い怖い怖い怖い怖い。
何度も心でそう言った。
「…………っ。」
これを飛んだら皆が同情する。
お父さんも抱き締めてくれる。
お母さんも、泣いてくれる。
それだけで良い。
それだけで逝ける。
だって、今まで孤独だったから。
だから、私は空を飛ぶんだ。
校庭までの、少しの距離を。
「…………。」
そう、決めたんだ。