五月雨・弐
口を開いたのは、高橋。
皆が買い出しに行って
私たちは二人で留守番していた。
自殺未遂まで見られて
ほとんど隠す事なんかなかったのに
もう、こんなことばっかり。
「……死ぬ予定だったのに、今度は病気だってさ!マジ、しゃれになんないんですけど……」
「…………」
高橋は何も言えずにうつむく。
涙で口の中がしょっぱかった。
悲しい。
悲しいよ。
「谷口」
「あの時死んだほうが、よかった」
そう言ったら、高橋はムッとした顔をした。
責めている眼だった。
私を、責めてる。
「……俺は、いつだってお前を見てるのに」
「……冗談止めて!」
「今も、ずっとずっとずっとだよ!変わらない。俺がはげたらお前は引くだろうけど、お前が怪獣になろうがいきなり男になろうが、俺は……」
“ガラッ”
ドアが開く。
綺麗な花を持ってきてくれる紗江。
私は窓の外をとっさに向く。
涙を見せないように拭った。