五月雨・弐
「言える」
「……嘘」
「嘘じゃねえよ」
「どうやって証明できる?」
「毎日来てんだろ」
高橋はギュッとあたしの手を掴んだ。
二人の手が、震える。
汗まで出てきて、骨が当たる。
「骨ばっか、皮だけ」
「それでも谷口だろ」
「……幸せじゃないのは、変わらない。でもそれでも前は外を走り回れた。部活も出来て、幹部にもなれてたはずだった。それに比べたらね、甘やかされてたって不幸。皆、きっと離れてっちゃうから」
「……そんなこと、言うなよ」
頬が濡れた。
お父さんは、しばらく来てくれなかった。
遠い道の上にはいつも高橋が立っていた。