スイートメモリーズ
「お前、パーも出せるんじゃん。せっかく負けてやろうと思ったのに。あいつらんときもチョキ以外出せって」
ククッと笑う陽ちゃんが、その時初めて私を助けようと してくれてたんだってわかった。
「なんで…」
意地悪ばっかりしてたくせに、なんでこんなことするの?
「お前に意地悪していいのは、俺だけだから。な?」
ニッと笑いながら、頭をくしゃっと撫でられて、なんだかわからないけど、涙が溢れた。
「えっ?ちょっ!おい!泣くなって!」
思い出した。
あの頃から陽ちゃんは意地悪だけど優しかったってこと。
階段の向こうで、泣きながら歩いてくる私をずっと待っててくれたこと。
そばで慌てる陽ちゃんを見上げて、泣きながらへへっと笑う。
「お前!泣くか笑うかどっちかにしろよ!すげー不細工だぞ!」
私が笑ったのを見て少し安心したのか、いつもの陽ちゃんに戻って憎まれ口をたたく。
でももう嫌じゃない。
意地悪するのは優しさの裏返しなんだって気づいたから。
end