いつか羽化する、その日まで
一旦給湯室の方へ引き返した小林さんは、今度は小さなカゴと白い箱を持って戻ってきた。カゴの中にはスティックシュガーやミルクが入っている。
「好きなだけ使っていいよ。……あと、これも食べて」
営業所に戻りがてら買ってきたという、四角い箱を開けて小林さんが取り出したもの。それは。
「これ!〝たまごの城〟の焼きプリンじゃないですか!」
声が一段と大きくなった私に、意外そうな視線が寄越される。
「知ってるんだ。美味いよな」
「はい、大好物なんです!」
たまごの城とは、卵を使ったお菓子を販売している店だ。県内にたった数店舗しかなく、休日は行列ができてしまうほどの人気振り。お店のシフォンケーキもクッキーももちろん美味しいが、私のお気に入りはなんといってもこの焼きプリンなのだ。
表面のカリカリとした焼き目にスプーンを入れると、すぐになめらかなカスタードに迎え入れられる。そして最下部で待っているのは少しほろ苦い緩めのカラメル……。
ああ、想像しただけでよだれが出そう。