いつか羽化する、その日まで
Day 6 : 私、機嫌の取り方がわかりません。

何とか最初の週末を終えて、また月曜日がやってきた。二週目となった私は時間に少しだけ余裕が生まれ、バス停まで猛ダッシュすることもなくなっている。
少しだけ自信がついた私は、気分良く出社した。


「おはようございます。小林さん、もう掃除終わっちゃいました?」

「おはよう。いや、今鍵開けたところだから、これからだよ」

「それなら私、外やってきます!」

「悪いな。今日も暑いから気を付けて」


朝の掃除だって慣れたものだ。一番早く出社する小林さんには敵わないけれど、今日も私は暑さに負けないように腕まくりをする。


「おはよ。今日もあちーね」


ほうきの柄を握って意気込んでいるそんな私に、気怠そうな声をかけてくる人。振り返らなくても誰だか分かる足音付きだ。


「村山さん、おはようございます」

「今日は先越されちゃったな。うんうん、若いってスバラシイ」

「……」


感情が全くこもっていない言い方に、つい真顔で見返してしまった。そのまま視線を合わせていると、優しげな微笑みを見せられる。そして、とんでもない発言を繰り出してきた。


「何その顔。……もしかして、僕に見とれちゃった?」

「なっ……! そんな訳ないじゃないですか!」

「隠さなくてもいいよ。サナギちゃんはすぐ顔に出るね」

「だから! ち、が、い、ま、す!」

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