いつか羽化する、その日まで
営業所の外へ出ると、既に外に出ていた小林さんの元へと駆け寄る。小林さんはそんな私を一瞥し、建物の裏へと進んでいった。
「こっちにも車を停められるんですね」
狭い道路を挟んだ向こう側の敷地には、いかにも社用車です、と主張しているような白やシルバーの車が並んでいた。
「駐車場借りてるんだ。でかく見えるけどほとんど別の会社の車だよ」
ほら、と小林さんが指を差した先には、社名の入った立て看板が置かれていた。なるほど、確かに一列分しか借りていないようだ。
「前までは割と自由に営業所の前にも停められたんだけど、最近二階に他の会社が入ったから」
営業所の前の駐車スペースは、今は専ら来客専用なのだという。
「本当に立川さんが車通勤じゃなくて助かってる」
ーー主に経費的な面で、という小林さんのぼやきは、おそらく本音だ。
「今日乗る車はこれだから」
そう言って小林さんは、手にしていた車の鍵でロックを解除した。途端、何かが視界の端に揺れている。
(ん? 何だろう?)
一瞬のことで確認ができなかったが、そのまま小林さんが後部座席に荷物を置き始めたので、私もそれにならってバッグを置かせてもらった。