いつか羽化する、その日まで

「嬉しいな。サナギちゃんと外回りできて」


上機嫌の村山さんは、このどんよりとした空模様も気にならないようだ。軽やかにハンドルを切っている。


「ずっと気になってたんだけど、どうしてインターンに申し込もうと思ったの?」


窓の外をぼんやり眺めていると不意に問いかけられた。私は村山さんの横顔に視線を向ける。


「就活熱心の友だちがいるんです。彼女に色々と影響を受けているうちに、学校の就職課に通うようになって。そこで、インターンのことを教えてもらいました」


私はインターンを申し込むきっかけとなった、香織と就職課の神田さんの顔を思い浮かべていた。


「私、優柔不断なんです」


気付けば、ぽろりとこぼれていた。


「うん、知ってる」

「……そうですか」


隣からくすくすと笑う声がしたが、不思議と気持ちは凪いでいた。


「それに、どうも流されやすくて。自分の意志や意見を主張できないどころか、聞いているうちに他の人が言っていることの方が正しいのかもっていつも不安に思っちゃうんですよね」

「ああ確かに、僕の話にころっと騙されてるよねえ」

「それは村山さんが度を超えてるからですっ」


また余計な茶々を入れて、と呆れて隣を見る。村山さんは先ほどより大きな声で笑った。

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