いつか羽化する、その日まで
「責任感が強いのはいいことだけど、もう少し早く言って欲しかったかな」
「そう、ですよね。……すみません」
「〝報告・連絡・相談〟は、社会人の基本。なるべく速やかに、ね」
「はい……」
村山さんの指摘はもっともだ。
もしかしたらこの後予定があるかもしれないのに、こんな風に突然残りたいと言われても困るだろう。それも、部下でもないインターン生に。意固地になっていないで早めに相談するべきだったと心から反省した。
しゅんとうなだれていると、にやにやと覗き込まれた。
「お、サナギちゃんが珍しく素直。かわいいなあ」
「わ、私、作業しますから!」
バタバタと席に着いて打ち込み作業を再開する。私が変に気にしてしまわないようにああやってふざけた言い方をしてくれた気がして、胸の奥が温かくなっていく。
ーーこんなの、絶対に気付かれたくない!
村山さんがブラインドを下ろしに行かないことをいいことに、私は、赤くなったかもしれない顔色を射し込む夕日に隠してもらうことに決めた。耐え切れずに、すぐに窓辺へ向かうことになったとしても、だ。