いつか羽化する、その日まで
・・・・・

「……」

「ん、なに?」

「い、いえ」


慌てて顔を前に向ける。ぱっと見は目の前の画面に集中している風だが、意識は頭の遥か上だ。
このままじゃいけないと分かっているけれど、どうにも気持ちの切り替えができない。パソコンの入力作業もタイプミスばかり繰り返してしまう。昨日、反省したばかりだというのに。

そんな私に気付いてか、隣からため息が聞こえた。


「あのさ。僕の顔、何か付いてる?」

「な、なにも」

「……」


怪訝な表情をした村山さんと目が合った瞬間、思わずさっと逸らしてしまった。


ーーもうひとつの困ったこと。

それは、村山さんとうまく話せなくなってしまったことだ。


昨日までは何の問題もなく接することができていたのに、どうして今日は調子が悪いのだろう。もしかしたら本当に体調不良なのかも、と思い至るがどうやらそれは違うようだ。


「立川さん。今日はお客さんが来るから、会議室のセッティング手伝ってもらえる?」

「はい! 今行きます」


小林さんに声をかけられた私は、スムーズに返事をすることができたから。


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