いつか羽化する、その日まで
・・・・・

「挨拶ばっかりで、疲れたでしょ? どうぞ」


ことん、と置かれたコップを見て、私は驚愕した。


「え、でも私、インターンで来たので……」


お客さん扱いされる訳にはいかないと思っての発言だったが、その人はお盆を胸の前に抱えてふふふと笑った。


「いいのいいの。外、暑かったでしょ?」

「……すみません。ありがとうございます」


ジーンと音が出そうなほど感激した。ストローに口を付けると、キンキンに冷えたアイスコーヒーが喉を滑り落ちる。ストローにぶつかって鳴った氷の音が、涼しげだ。


「ガムシロップとかミルクとか、必要だったらどうぞ。ここには甘党さんがいるから、たくさんストックがあるの」


遠慮しないでね、と事務員の佐藤さんは給湯室にお盆を返しに行った。


ーー確かに、少し気を張ってしまっていたかも。

私はそっと息を吐いた。

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