いつか羽化する、その日まで
Day 15 : 私、勇気を出します。
「〝昼休み空いてますか〟って聞かれたら、色々想像するじゃない」
後ろから聞こえてくる声は、おそらく独り言のようだ。
「もしかしたら、〝愛の告白かも〟って期待したり」
「……」
思わず振り返りそうになるが、ぐっと堪えた。ちなみに、私はそのようなことを言える勇気は持ち合わせていないし、元から予定もなかった。
「あーあ。昨日は眠れなかったのになあ」
そもそも、これは本当に独り言なのか。
特にこたえも求められていないようだが、いかんせん声が大きすぎる。その〝独り言〟は、唐突に私の隣を歩く人を攻撃した。
「ーーなんで小林さんもいるんですか」
「いたら悪いかよ」
はあ、とため息が聞こえる。
隣を見ると、仏頂面の小林さんが呆れたように後ろを振り返っていた。
「いやあの、皆さんも誘ったんですけど残念ながら来られなくて」
一昨日村山さんへ咄嗟に言ってしまった〝お礼〟。私は、最終日の昼食をご馳走することに決めた。どうせなら人数が多い方がいいだろうと、その後営業所の全員へ声をかけたのだ。
残念ながら所長は外出、佐藤さんは留守番となってしまい、いつかのように小林さんと村山さんと三人で外を歩いている。
目指すのは、もちろんお馴染みのラーメン屋。