いつか羽化する、その日まで
私たちは無事にテーブル席へ座ることができた。前と同じで、小林さんと村山さんが私の向かいに並んで座っている。
既視感に思わず口元を緩ませていると、村山さんはそれを目ざとく見つけたようで、すかさず聞いてきた。
「どうしたの?」
「いえ、前に三人で来たのが随分前みたいに感じちゃって」
「そうだな。あれから二週間くらいしか経っていないのに」
小林さんも頷く。私にとっては目新しいことの連続で、気の休まる暇がなかった三週間だった。終わってみればあっという間に感じてしまい、不思議な気分になる。
どうやらそれは二人も同じのようで、いかに普段と違う環境だったかが分かるかのようだ。
「はいお水どうぞー! 注文決まりました?」
相変わらず元気の良い店員さんがやってきたタイミングで、私は顔を上げた。
ーーいつまでもうじうじと悩んだまま終わるのは、嫌だ!
照れたり恥ずかしがったりして心配をかけるくらいなら、出会った頃のように意地悪を言われる方が、何倍もマシだ。
やはり最後に見るのは、いつもの笑顔がいい。それを何度も思い出して、この先頑張るから。
「はい! 担々麺三つお願いします!」
「は?!」
「え?!」
向かいに座る二人からギョッとしたような顔を向けられたが、気にせずもう一度「お願いします」と駄目押しのように言う。
「はーい、担々麺三つー!」