番犬男子
周りの女子たちも、雪乃という男子に本気で恋をしているのかもしれない。
告白した女子が失恋して、ホッとしているのかもしれない。
だからってね。
あんたたちには、バカにしてからかう資格も、告白した女子の勇気を踏みにじっていいルールもないんだよ。
告白した女子みたいに、大勢の前で想いを告げることもできないくせに、えらそうにするな。
嘲笑は、しぼむどころか、広がっていく。
いい加減、やめてよ。
耳障りだ。
「Shut up!」
高まった苛立ちを孕んだ大声が、嘲笑をかき消した。
周りの女子たちの視線が、あたしを突き刺す。
雪乃という男子も、驚いた瞳であたしを見ていた。
静まり返ったのはたったの一瞬だけで、すぐにざわざわし始めた。