番犬男子




この人が、あたしを?


なぜ?



疑問ばかりが浮かぶ。




あたしでさえついていけていないのだから、当然の如く、周りはもっとついていけていない。


だが、あたしへの嫉妬や敵意は、十分すぎるほどに注がれていた。



この状況に振り回されていないのは、雪乃という男子だけだ。




「今日もお兄さんのところに行こうとしてるんだよね?違う?」


「そうですけど……」


「よければ“僕”がお兄さんのいるところへ案内してあげようか」




――あぁ、なんだ、そういうことか。



ようやく、わかった。


雪乃という男子の真意が。



その真意のために、この人は、あたしを探していたんだ。




< 114 / 613 >

この作品をシェア

pagetop