番犬男子
あたしは一瞬悩んで……いや、悩まなくてもいいか。
強ばっていた表情で笑顔を作った。
「お願いします」
案内してもらおうじゃないか。
雪乃という男子があたしに手を差し伸べる。
あたしは躊躇なく、その手を取った。
「行くよ」
そう合図すると、手を握って走り出した。
女子たちの群れを強引にかき分け、繁華街を駆けていく。
女子たちのほとんどがヒールを履いていたこともあり、あたしたちを追いかけてくることはなかった。
「何なのよ、あの女!」
代わりに、雪乃という男子と一緒に去っていくあたしの背中を、憎らしそうに睨んでいた。