番犬男子
息を整えながら、視線だけを上に上げる。
人気の少ない道の端っこで。
雪乃という男子が涼しい顔をして、滴る汗を拭う。
何気ない仕草なのに妖艶さをほのめかすその姿に、変にドキッとしてしまった。
「綺麗」という言葉は、この人のためにあるように思えてきた。
「どうかした?」
雪乃という男子はあたしの視線に気づいて、首を傾げる。
「な、なんでもないです!行きましょう!」
謎な緊張を抱いたまま、勢いでごまかした。
いつの間にか、呼吸は楽になっていた。
「そうだね、行こうか」
含み笑いする雪乃という男子の隣に並んで、歩き出した。