番犬男子
歩き始めてすぐ、道にはあたしと雪乃という男子の2人だけとなった。
本当にこの街の西側は、人口が極端に少ない。
「さっきはありがとうね」
「え?」
「女の子たちのことを注意してくれて」
ああ、そのことね。
お礼を言われるほどのことはしていない。
ただ周りの女子たちにムカついて、黙れって戒めただけだ。
「“私”も注意したかったんだけど、告白してくれた子を守ったみたいになってさらに大ごとになると思って、何もできなかったのよね」
あ、一人称も口調も、変わった。
まるで、スイッチがオンオフ切り替わったみたいに。
どうして、今変わったんだろう。
気分?
あたしと2人だから?
「だから、チカちゃんが動いてくれて、本当に助かったわ」
もう一度「ありがとう」と言われ、あたしは素直に感謝の気持ちを受け取っておいた。