番犬男子
なぜだろう。
この人とは、まだたった2回しか会ったことがないのに。
さっきの「僕」や紳士的な口調より、今の「私」や女口調のほうがこの人に合っている気がするのは。
「あの……」
「ん?」
深く考えずに、問いかける。
どうして。
「さっきと一人称や口調が違……」
「あ」
違うのはどうしてか、と言い終わる前に、雪乃という男子が笑って一音漏らした。
わざとかと思ったけど、違う。
あの感じからして、単なる偶然だ。
「着いたわよ」