番犬男子
まず最初に口を開いて沈黙を破ったのは、ここまで案内した雪乃という男子だった。
今はベンチの横にいる。
「嘘ついてごめんなさいね、チカちゃん」
嘘って、お兄ちゃんがいないこと?
そのことなら別にいいよ。
だって、
「知ってました」
そう一言呟けば、双雷のメンバーが静かに驚いた。
雪乃という男子が嘘をついたことも、その真意も、最初から気づいていた。
その上で、ついてきたんだ。
「雪乃さん、嘘が態度に出た覚えありますか?」
「バカ。雪乃がそんなヘマするわけねぇだろ」
ベンチのそばの木の下に立っている幸汰と遊馬が、嘘を知られたきっかけを探る。