番犬男子
あたしの推理が当たっていたことを強盗犯にドヤ顔で自慢したいけど、今は集中力を切らせては元も子もない。
瞬きひとつせず、神経を尖らせる。
強盗犯の行動を些細なことでも、見落とすことのないように。
全てにおいて、敏感に、繊細に、反応しろ。
ジリ……、と強盗犯の右足がわずかに前に出た。
もう少し。
強盗犯の体が、前のめりになる。
もう、少し。
ぎりぎりまで、引きつける。
強盗犯が両腕をゆらり、動かした。
今だ……!
強盗犯があたしに迫ろうとした、直後。
あたしは地面を蹴って、俊敏に強盗犯の横を走り抜けた。
強盗犯をうまくかわせたことに安堵する暇もないまま、本日三度目となる全力疾走をする。