番犬男子
「クソが……っ!」
後ろから舌打ちと共に、追いかけてくる足音が聞こえる。
クソなのはあんたのほうだ。
と反論したい気持ちをグッと抑え、あたしは追いつかれないように足と腕を必死に振った。
あたしは、男子と渡り合えるほど、足にはあまり自信がない。
だから、たまり場のある方向に走り、双雷のテリトリーに踏み入れることで、強盗犯の追いかける衝動を喪失させ、あきらめてもらう作戦だ。
双雷のテリトリーは、おそらく、この道の突き当たりを曲がって、真っ直ぐ進んだ奥らへんから。
あくまで双雷には手は借りない。
双雷最強説を基にテリトリーを活用し、自分で解決する。
問題はあたしの体力だが、このくらいの距離ならなんとかなりそうだ。
相手が強盗犯1人だけで助かった。
はさみうちされる心配がない。