番犬男子
あとちょっと走れば、突き当たりだ。
本当は強盗犯との距離間を拡げたいが、一定に保つことで精一杯だ。
「待てや、クソ女!!」
誰が待つか。
あとクソ女やめろ。
作戦が成功したらすぐに警察を呼んであげるから、楽しみに待ってなよ!
エネルギーを全て逃走につぎ込み、無我夢中で走り続ける。
突き当りに差しかかった。
ラストスパートだ。
一気にスピードを上げる。
突き当たりを曲がろうとした、その時。
視界の隅に、あたしが曲がろうと考えていた反対の位置が映る。
そこには、発進させようとエンジンを震わせるバイクと、それにまたがる1人の男子がいた。
「そいつ、捕まえてくれ!」
後方にいる強盗犯が、切羽詰まった声を放った相手は、バイクに乗る男子しかいない。