番犬男子
目尻に、涙がたまる。
“あの日”の夢がぼやけて、だんだんと意識が戻ってくる。
「ん……」
うっすら瞼を持ち上げると、みぞおちに残っている痛みが急に姿を現した。
いった……っ。
そういえば、あのバイク男に殴られたんだっけ。
みぞおちをさすろうとしたら、腕が動かせなかった。
後ろで縛られているんだ。
手首にロープが巻きつけられた違和感はあるけれど、足にはない。
どうやら足は拘束しなかったようだ。
涙の膜が張った視界を細めて、念のためまだ眠っていることを装いながら、あたしが今いる現在地を確認した。
ここにいるのは、あたし1人。
足に直接冷たさが伝わる、コンクリート。
窓はなく、薄暗い。
唯一、光が差し込むのは、中途半端に半分ほど開かれている、前方のシャッターのみ。
後ろのほうにダンボールかは定かではないが、それっぽい箱が山積みにされてある。
他にも鉄パイプや木材、あたしの手首を縛っている物と同じと思われるロープもある。