番犬男子
まだ、起きてはいけない。
そんな気がする。
あたしは自分の直感を信じ、目を瞑ったまま耳を澄ました。
「こいつまだ寝てんのか」
2人が、あたしの目の前まで近寄ってきた。
「お前、強く殴りすぎたんじゃね?」
「捕まえてくれ、って言ったじゃねぇか」
「そうだけどよ……。捕まえる=殴るの意味がわかんねぇよ」
「元々気絶させる予定だったんだろ?ならいいじゃねぇか」
よかった。
これっぽっちも、あたしが演技してることに気がついていないみたいだ。
「で、こいつ、どうすんの?」
「どうって、人質にするに決まってんだろ!」
2人の声が、少し離れた。
それでも、近くにいることには変わりない。