番犬男子
逆にあたしが、2人が逃げていくところを見ることになるとは……。
お兄ちゃんが来るまで、思いもしなかった光景だ。
あたしはポケットからスマホを取り出して、警察に電話をかけた。
昨日のコンビニ強盗の犯人が現在逃亡中、ただちにひっとらえよ。
端的に省略すれば、こんな内容。
通報し終え、スマホをしまいながら「お兄ちゃん」と、未だに回されているの左腕に触れる。
お兄ちゃんは腕を放して、あたしに視線を向けた。
抱きしめたままでよかったのにな。
「なんだ」
「追わないの?」
「…………ああ」
「ふーん」
頷くまでの間は何だったんだろう。
気になる。