番犬男子
ここで突っ込んで聞いたら、2人を追わない理由を答えてくれるだろうか。
『双雷と侍を守るために、裏で敵を潰してる始末屋』
なぜ。
なぜ、今。
昨日の不良の噂を想起したの?
まさか。
2人を追わない理由って。
始末、するから?
お兄ちゃんに、侍に、従順な番犬が。
「どうかしたか?」
急に静まり返ったあたしを不思議に思ったお兄ちゃんが、背中を丸めて、感情が消えたあたしの顔を覗き込む。
あたしは2人を追わない理由を聞こうとして、ゆっくり唇を閉ざした。
怖かったんじゃない。
臆してるんじゃない。
でも、今は……せめて今だけは、これ以上不良の世界の有りさまを叩きつけられたくはなかった。