番犬男子
ここで「なんでもない」と返すのは、さすがにおかしい、よね。
ごまかさなきゃ。
「あ、そうそう!」
取ってつけたような、今何か思い出しました感。
これでお兄ちゃんを騙せた気はまったくもってしないけど。
いいや、スルーしちゃえ。
「さっきあの2人が仲間を集めてたから、ここ危ないと思うよ」
いつもなら飛び上がるくらい喜ばしいお兄ちゃんの視線が、今日はちょっと辛い。
あたしは必死に笑顔をキープする。
あたしのこと、もっと怪んだ?
大丈夫?
セーフ?
「そうか」
10秒ほどして、ため息まじりに視線が逸れた。
セーフ、っぽい。
よかったぁ。