番犬男子





胸を撫で下ろしたあたしに、お兄ちゃんがバイクの後ろにある荷物入れから取り出したヘルメットを差し出した。


太陽に照らされて、お兄ちゃんの黒髪に濃い青色の光が帯びる。





「じゃあ、帰るぞ」


『お兄ちゃん、帰ろう?』




“あの日”、お兄ちゃんに手を差し伸べたあたしと、重なる。



今日は“あの日”とは逆だね。


お兄ちゃんが助けに来てくれた。




「うん」



あたしは微笑んで、ヘルメットを受け取った。


……はずだった、のに。



手から、ヘルメットが滑り落ちた。




あれ?


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