番犬男子




お兄ちゃんが持ち前の反射神経で、ヘルメットが地面に落下する前にキャッチする。


そんなナイスでクールなシーンを見逃してしまったほど、あたしは柄にもなく愕然としていた。




恐る恐る、自分の両手を見る。



両手は、真っ白で。


こ刻めに震えていた。


あまり力が入らない。



手だけじゃない。


足も、気を抜いたら崩れてしまいそうだ。




「おい」



お兄ちゃんの声に、顔を上げる。



「な、なんでかね、震えが止まらなくて、力もなくて……」



原因には、気づいてる。


だけど、気づきたくなかった。



誤解されて、またあたしのせいでお兄ちゃんを傷つけてしまいそうで。




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