番犬男子
あたしの瞳に映る、お兄ちゃんの無愛想な表情に秘められた、憂い。
違う、違うんだよ。
不良が怖かったとか、不良と関わりたくないとか、そんなんじゃない。
ただ、今更になって、初めて誘拐されたことに戦慄してるだけなんだよ。
あたし、お兄ちゃんが怖いなんて思ってない。
だから、やめてよ。
そんな表情、しないで。
「お兄ちゃ……ん!?」
気持ちを告げようとしたら、お兄ちゃんが近寄ってきて、あたしの両脇に手を入れて持ち上げた。
なっ、何!?
お兄ちゃんは、びっくりするあたしを力技で移動させ、バイクに乗せた。