番犬男子






バイクが、動き出した。


風を切りながら、倉庫を去り、双雷のたまり場のある方向へ走っていく。




「ねぇ、お兄ちゃん」



声をかけても返事はない。


あたしはさして気にせずに続けた。



「どうして、あそこに?」




あたしをさらったのが同じ暴走族のやつらだとしても、お兄ちゃんは来ないと思ってた。



だって、そうでしょ?


お兄ちゃんはあたしを覚えてないのに、他人同然のあたしのために、罠だと知っててリスクのある場所に行ったとして。


一体何になるというの?




「幸汰から連絡がきて、みんなで協力してあちこち探してたんだ」


「どうして?」



再び聞くと、「愚問だな」と返ってきた。



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