番犬男子
当たり前のように、あたしを心配して守ってくれたこと。
あたしのヘルメットはあって、お兄ちゃんの分はないこと。
あたしを抱きしめた時のお兄ちゃんの手のひらが、汗ばんでいたこと。
心なしか、バイクの速度が今朝より遅いこと。
全部、お兄ちゃんの優しさ。
もっと、もっと、好きになっていく。
どれだけあたしをお兄ちゃんのトリコにさせる気なんだろう。
たまり場に近づいてきて、お兄ちゃんが口を開いた。
「さっきあいつらに言われたんだ」
あいつらって、双雷のみんなのことだよね。
何を言われたの?
あたしに関係すること?
「お前の言うこと、ちょっとは信じてやれって」