番犬男子
どこかのお嬢さまが愛用してそうな、この贅沢な部屋を、不良がたまり場として使っている。
「……似合わないなぁ」
「何が?」
「ううん、なんでもない!」
黒のソファーに座っている遊馬に独り言を聞かれ、咄嗟にはぐらかす。
カラフルな髪色は大して不釣り合いには見えないけど、やっぱりこの部屋に不良は異質に感じる。
唯一完璧に合っているとすれば、あたしの隣で優雅に、幸汰が淹れたコーヒーをたしなみながら読書をしている、不良っぽくない優美な雪乃くらいだ。
なんとなく、今ここにはいないお兄ちゃんを頭に浮かべた。
お兄ちゃんはかっこいいし、どこででも似合うっちゃ似合うんだけど、こういう部屋よりももっとモノトーン系の部屋のほうが合っている。
あくまであたしの好みだけどね。