番犬男子
そんな幹部室でのんびり過ごしていると。
パトロールに出ていたお兄ちゃんと稜が、幹部室に入ってきた。
お兄ちゃんが帰ってきて駆け寄ろうとしたが、お兄ちゃんも稜も真面目な顔をしていて、行くに行けなかった。
おとなしくソファーに座り直す。
あたしだって、空気は読める。
今は「お兄ちゃーん!」って甘えていい空気じゃない。
いつもならパトロールは、たまり場を守備する留守番組を数人置いて、残りのメンバーで2人以上のチームを組み、割り振られた場所を巡察する。
パトロール後は、ホールに集まって報告会なるものを行うらしい。
しかし、今日のは少し違う。
お兄ちゃんと稜のみがパトロール、いや、この場合現地調査と言ったほうが正確だろう。
すでに手に入れた情報を基に事実か確認しに行き、たった今戻ってきたのだ。
今回の行動は、普段のパトロールとは似て非なるため、報告会はない。
……と、ここまで説明したけれど。
お兄ちゃんと稜が確認した情報の内容は、あたしにもわからない。
みんなに報告しないということは、そこまで大ごとではないんだろう。
ただ、最低限の人数で調査しに行ったのを察するに、あまり調査していることを悟らせたくないようだ。