番犬男子
他に、理由……理由……。
最近、変わった出来事はなかった?
例えば、双雷も関わりのある場所で、何かやましいことをした人がいるとか。
双雷にケンカを売ったはいいものの、負けそうになって逃げた人がいるとか…………あっ!
「おい、千果!」
「なっ、なに!?」
赤のソファーに座っているお兄ちゃんの声が鼓膜に響いて、反射的に姿勢をしゃきっと正す。
「何度も声かけてたのに、名前を呼んだらすぐ返事するなんて可愛らしいわね」
雪乃が隣で柔らかく含み笑いしていた。
えっ、嘘。
何度も呼ばれてたの?
考え込んでて気づかなかった。
そのおかげでお兄ちゃんにまた名前を呼んでくれたからいっか、なんて、思っちゃダメなやつだこれ。