番犬男子
あたしが誘拐されたあの日以降、お兄ちゃんはあたしの名前を呼んでくれるようになった。
でも、毎回じゃない。
今みたいに叱られ半分に呼ばれたりすることもあるし、お兄ちゃんの気まぐれで呼ばれることもある。
「えっと……なに?」
何か大事な話してた?
全く話を聞いてなかった。
お兄ちゃんにため息を吐かれ、肩をすくめる。
ごめんなさい、お兄ちゃん。
反省してます。
「お前、」
あ、お前呼びに格下げされちゃった。
「あいつらのこと、覚えてるよな?」
「あいつら?」
「お前をさらった2人だ」
「あー、うん、覚えてるよ」
強盗犯とバイク男でしょ?
ばっちり覚えてるよ。