番犬男子
「だったら何?」
金色の猫目がすっ、と細められる。
それすなわち、肯定。
――やっぱり。
お兄ちゃんがあたしを幸汰に同行させた真の目的は、不良の怖さを、番犬の存在を、あたしに知らしめるため。
お兄ちゃん、気づいていたんだ。
あたしが誘拐されたあの日、あたしが、2人を追わない理由を聞こうとして結局ごまかしたことに。
俺のそばにいるつもりなら、甘えるな。
この世界から目を逸らすな。
そう、責められてる気分だった。
お兄ちゃんがあの日この2人を追わなかったのは、今日、番犬の手によって、あの日捕まえるよりもずっと残酷に成敗するため。
最初から、逃がしてなんかいなかった。
逃がしたように見せかけて、どん底に堕とす準備をしていたんだ。