番犬男子
バイク男は、一心不乱にこちらに迫ってるだけ。
逃げることしか考えてない。
行動を読む必要も、ない。
あたしはぶつかる直前でバイク男の後ろに回り、力いっぱいバイク男の背中を押した。
受身態勢もまともに取れずに、バイク男は顔面から地面に倒れた。
ヒュ~、と軽快に口笛を吹きながら近寄ってきた幸汰が、我に返ったバイク男の顔だけを強引に起こす。
「ひっ……!!」
「おやすみ」
そう告げて、バイク男の鼻をへし折るように思い切り殴った。
元からあった恐怖に衝撃が覆いかぶさり、呑み込まれ、たった一発でバイク男は気を失った。