番犬男子
強盗犯とバイク男がもう抵抗してこないことを確認し、お兄ちゃん直々に頼まれた任務完了した後。
3度目となる通報をし終えたあたしを、幸汰が一瞥した。
「結構やるねぇ」
幸汰の目はすぐに、完全に地面にうつぶせの形で気絶しているバイク男に向けられる。
あたしが避けて対処したことに対する言葉なんだろうけど、これ褒められてるよね?
わかりづらい遠回しの皮肉じゃないよね?
スマホをポケットにしまいながら、あたしもバイク男の無防備な背中を無情な視線でなぞった。
「ケンカは無理でも、自分の身くらい自分で守れるに決まってるでしょ」
そうでなきゃ、こんなところにのこのこやって来たりしない。
まあ、最後は、幸汰が止めを刺してくれたおかげだけれども。
「ありが……」
「礼はいらねぇよ。あんたのためじゃねぇし」
「……あっそう」
知ってるよ、そのくらい。
止めを刺したのは、どうせお兄ちゃんへの忠誠心ってところでしょ?
「ありがとう」も簡単に言わせてくれないんだ。
なんかムカつく。