番犬男子
あたしと雪乃から一定の距離を取って窺っている野次馬を、チラッと横目に見てみる。
周りにいる誰もが、騒いでいるばかりで、今の雪乃に違和感を抱いていなかった。
白薔薇学園での雪乃は、男口調で一人称が「僕」であることが通常みたいだ。
「雪乃もここの生徒だったんだね。びっくりしたよ」
「言ってなかったっけ?」
大きく頷けば、困ったように苦笑された。
「まさか、他のみんなも?」
お兄ちゃんはブレザーではなく学ランで、地元の学校に通っている。
じゃあ、他の幹部や下っ端は?
「あははっ、違う違う。そんなわけないだろ?他のメンバーはほぼみんな、地元の北高校だよ」
「やっぱそうだよね」
笑い飛ばされ、あたしはホッと息を吐く。
双雷のメンバーが全員、ここの生徒なら、不良の偏差値が異常に高すぎる。
夢かドッキリのどちらかを疑うね。
雪乃1人なら、現実味があって信じられる。
品行方正だし、知的だし、ここの生徒として文句ない。