番犬男子
「それは俺らも聞いたぜ」
遊馬も手を挙げて、「な?」とお兄ちゃんと顔を見合わせる。
ふと、お兄ちゃんと視線がぶつかった。
「千果」
「なに?」
「お前は、この噂をどう思う?」
聞かなくてもわかってるくせに。
あえてあたしに聞いたってことは、あたしの考えに特別な信頼を持ってくれているんだって自惚れちゃうよ?
あたしはニヤつく口元を必死に引き結んで、一歩前に出た。
「あたしが思うに、その噂は十中八九真実ね」
証拠は、言わずもがな無い。
だけど。
「理由は?」
「魁皇の下っ端は、不良の中でも素行が悪いバカが多いって聞いてる」
実際、強盗犯の強盗の仕方は、勢い任せでバカ丸出しだった。
おそらく、他の連中も似たような感じなんだろう。
「そのバカどもが水面下で企んで、計画的に行動しようだなんて、普通考えないでしょう?」