番犬男子
各々意見を言って、ざわつき出す中。
「しばらくは様子見だ」
お兄ちゃんの言葉で、一気にしん……と静まり返った。
誰もが意外そうにしていた。
あたし以外は。
うん、だよね。
あたしもお兄ちゃんに賛成。
「様子見?どうして?」
「俺ら双雷に歯向かおうとしてるやつらでも、一応魁皇っていう族に属してるやつらだ。俺らが動く前に、魁皇の総長らがけじめとして何か対応すんだろ」
雪乃の疑問に対して、お兄ちゃんが冷然と説明した。
水面下で計画してるのは、たぶん魁皇の中でも下っ端だけ。
幹部以上の人たちも協力していたら、こんなに早く噂は流れず、もっとうまくやっていたはずだ。
とっくに噂を耳にしてるであろう幹部以上の人たちが、同じ暴走族の一員として、命知らずな復讐劇を用意してる下っ端を戒める責任がある。
たとえ放任主義だとしても、双雷に挑もうとしてることの意味と、それがもたらす結果を、幹部以上の人たちなら察して下っ端たちを止めるだろう。