番犬男子
8月25日。
文句なしの晴天。
「ん……」
重たい瞼を持ち上げると、目尻から一粒の涙がポロッと流れた。
寝ぼけ眼をこすり、腕を前に伸ばす。
「久し振りに、“あの日”の夢を見たなぁ」
10年前の“あの日”がきっかけで、“彼”とは会えなくなった。
ずっと、名前を呼んでもらってない。
だけど、ようやく、条件が満たされた。
眺めた窓の外は、どこを見ても一面、雲が浮かぶ真っ青な空。
……そう、あたしは今、飛行機に乗っている。
アメリカから、日本へ。
海を越えて、“彼”に会いに行く。