番犬男子




ポロッとあっけなくこぼれた涙は、カラスの頬を濡らす。


まるで、カラスが泣いているよう。



あたしの姿を目の当たりにして、次第に笑いは消えていった。



静寂に包まれる。




周りの人たちは、無関係でいたいならそうすればいい。


見物したいだけなら、他人ごとのように見ていればいい。



自分がどうするかを決めるのは、個人の自由だ。



だけど、……だけどっ。


同じ地球で生きている生命なのに、『気持ち悪い』『汚ぇ』って疎むのはおかしいよ。




こみ上げる涙をこらえながら、カラスを優しく抱きしめる。




気持ち悪くなんかない。


汚くなんかない。



どの命も守られるべき、大切で綺麗な命だ。




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